カリフォルニア州在住ビアラバーです。
わははは、2019年はビールばかり飲んでいたらあっと言う間に無益に過ぎてしまったが、2020年もとにかくビールを飲もうと心に決めた私。と言う訳で、美味いビールを飲みに早速ブルワリーに行くことにしたのだ。
そうと決まれば善は急げ、こーしてはいられないのだ!
だが、ここでいつものように興奮して慌ててはいけないのである。何しろ前回ブルワリーに行くつもりが、間違ってビアパブに行ってしまうと言う大失態を犯しているのだ。
全く俺はビールの事となるといつも逆上してまともな判断力を失ってしまうのだ。と言うか普段からまともな判断力など持ち合わせてないのだが、ビールの事となるといつもに増してひどくなってしまうのである。
しかも前回が最初の投稿であったにも関わらず、初っ端から間違ってしまったのだ。まったくもって不甲斐ないおじさんなのである。
なので今回こそは間違いないようにしっかりと指差し確認、安全第一、今日も1日頑張っていきましょー!と一人で号令をかけ、ブルワリーに向かったのである。
今回のブルワリーは近くにあるDasBrewと言うところで、ネットで見てみるとどうやら夫婦で始めた小さなブルワリーのようである。ここはドイツ系のビールを売りにしており、スーパーや小売店に卸すことなく直売と(ネット販売もある)テイスティングルームだけのようである。
だが面白いのはここのブルワリーはクラブメンバーと言うのがあるようなのだ。うーむ、ローカルに愛される小さな地元のブルワリーという感じで実にいいではないか。ラブ地元、ラブビアーである。
『これは期待できそうだ。』
という事で早速張り切って向かったのである。だが、今回は俺一人ではなく、娘と一緒に出掛けたのだ。と言うのも俺は自分でも呆れるぐらいの親バカ(親バカではなくただのバカな親という噂も一部ある)なので休みの日はどこに行くのも必ず娘と一緒なのである。
産まれた時から週末になるとほぼ毎回一緒に遊びに行っているのである。このバカ親、じゃなかった親バカはこの娘との週末デートをとても楽しみにしているのである。
そして本当にどこでも一緒に行ってしまうのでこうしてブルワリーでも一緒に行ってしまうのである。たまにテイスティングルームなどで子供はダメ、と言う所もあるが、北米のブルワリーは、ほとんどの所は子供もペットもOKなので気が楽である。
実際今回のブルワリーには俺の他にも子連れがいたし、本当に気軽にファミリーでも楽しめるようないい雰囲気のブルワリーであった。
早速着いてみると、外観はシンプルだが割と大きな建物である。外にもバーカウンターがあり、夏になったら外で飲むのも気持ち良さそうである。
ブルワリーに行く時はいつもソワソワして早めに出てしまうのだが、今回も例に漏れずオープンとほぼ同時に着き、一番乗りで入っていったのだ。
開店とほぼ同時に親子で入っていったので(さらにチワワのような娘は俺の制止など完全に無視して店の中に飛び込んでいったので)店の人は少し驚いていたようだが、親切な笑顔で迎えてくれたのだ。
入ってみると店の中は広々としていて綺麗である。バーカウンターにテーブル、それにソファーのある個室になってるようなスペースもあるのだ。ゆったりと落ち着いて飲む事も出来そうである。
壁にかかったビールジョッキがどうやらこのブリワリーのクラブメンバーのジョッキのようなのだが、結構な数があった。メンバークラブも人気のようである。
実に雰囲気の良い店で素晴らしいのだが、一刻も早くビールが飲みたい俺はゆっくりと店の観察などしてる場合ではないのだ。早速肝心のオーダーである。
いつものようにサンプルをオーダーする事にしたのだが、その為にはまず、当然の事ながら4種類選ばなくてはならない。うーむ、どれにしようか。最もワクワクドキドキし興奮する瞬間である。
あー、どのビールも美味そうである。あれも飲みたいこれも飲みたい、いっその事ぜーんぶ飲みたい、と言いたいところだが厳選して4つ選ばなくてはならないのである。
とても重要であり一番気合いの入る大事な場面である。
『うーむ、うーむ、悩むぜ。』
何しろこのセレクションで全てが決まるのだ、失敗は許されないのである。あれこれ考えているといつものことながら俺の頭は早くも混沌とし、取り乱してしまうのだ。
更に、である。そんな難しい問題に直面してると言うのに、俺にはじっくりと時間をかけている暇はなにのだ。何しろ今日は躾のなってないチワワ娘と一緒なのである。
一人でじっとしていられるのは5.3秒が限界なのだ、とてもではないがゆっくりビールを選んでる暇はない。興奮錯乱状態でメニューをチラチラ見ながら娘の相手をしていると、あまりの俺の悪戦苦闘ぶり(と言うかだらしなさぶり)を見るに見兼ねた店の人が「どんな感じがいいか言ってくれれば選んであげよう」と親切にも言ってくれたのだ。
いやー、なんていい人なのだろうか、助かったぜ。とてもではないが娘の相手をしつつビールを選ぶなど俺には至難の業である。こう言う時は素直に店の人に従ったほうがいいのである。
と言う訳で店の人に「娘と一緒なので軽い感じのセレクションで」と頼んでようやく席について落ち着く事ができたのだ。いやー、難題から解放されて助かったぜ、やれやれ。
まったく娘に振り回されてる本当にしょーもないおじさんである。さて、席について間もなく持って来てくれた4種類は下記のビールであった。
1. Lager (Dunkel lager)
2. Blonde (Pilsner)
3. Mean Monkey (Hefeweizen)
4. Red Sled (Red Ale)
『うーむ、どれもいい感じである。』
店のお任せセレクションもやるではないか、さすがである。やはり店の人に頼んで正解であったと満足し、早速試飲である。
しかし、ここでも問題があるのだ。何かと言えばもちろんチワワ(娘)である。
片時もじっとしていられないチワワと一緒ではゆっくり試飲してる場合ではないのだ。
『うーむ、一体どうしたらいいのだ。』
なーんて言いつつも用意周到な俺は事前にちゃんと作戦を考えていたのだ。名付けてブラインドテイスティングゲーム作戦!!である。
これは家でもたまにやるのだが、何種類かのビールを目を閉じて飲んで、どれがどのビールか当てる、と言う名前そのまんまのゲームなのである。
飲む人は目を閉じているので、このゲームにはビールを選んで渡してもらう人が必要なのだ。なのでその役をチワワにやってもらえばいいのである。
そうすれば遊びになるし、試飲も出来るしで一石二鳥なのである。
『わはははは、さすが俺、ビールの事になると俄然冴えているのだ。』
と言う訳でまずは普通にそれぞれ飲んでみて違いを味わってみたのだが、それぞれ個性的なのでこれなら楽勝、という感じである。
まずLagerだが、これは実によくバランスの取れた飲みやすいビールであった。ホップも程よく効いていて飽きのこないビールである。
次のBlondeであるが、全体的な印象はlagerに似ているのだが、こちらの方がやや軽め、と言う感じである。若干甘味もあり飲みやすいピルスナーである。
続いてのHefeweizenだが、これは実に実に美味かった。俺は基本的にwheatビールなら大体なんでも好きなのであるが、これは一口飲んで卒倒してしまうぐらいの美味さであった。wheatビール特有の甘さ、香り、そして喉越しとどれをとっても完璧と言っていいぐらいの最高のビールである。
最後のRed Aleであるが、これまた濃厚な味わいで美味いビールであった。香りも苦味も少し強めで複雑なモルトの味わいが楽しめ、この4種類の中では一番重厚感のあるビールであった。
『うむうむ、どれも実に素晴らしいではないか。』
しかもこれだけそれぞれが個性的なのだ、ブラインドテイスティングも楽勝に決まっているのだ、わははは。と言う訳でおじさんはそれぞれのビールの特徴を得意げに娘に語って聞かせ(娘は興味ないので全く聞いてなかったけど)、これならば全問正解間違いない、などと豪語していたのだ。
さーて、自信満々、余裕綽々でブラインドテイスティングスタートである。
娘が最初に渡して来たのはHefeweizenであった。さすがにこれはすぐに分かるのだ。
何しろ飲む前からグラスを近づけただけでその独特のバナナのような甘い香りが漂ってくるのだ。これは絶対に間違いようがないのだ。だが念のためもちろん一口飲み、さも難題を解いているような仰々しい表情をしてからおもむろに当ててやったのだ。
見事正解した俺はすっかり気を良くし、満面のドヤ顔で娘に「どうだ、すごいだろ!」と自慢したのだが、娘は特に感心する様子もなく平然と「次!」などと言うのある。
うーむ、もうちょっと驚きや感嘆、それに見事正解した親に対する称賛などがあってもいいではないか。まったく普段からちっとも親を敬うと言うことが一切ないのである。敬うどころか俺のことを子分とでも思っているようなのである。
とにかく、気を取り直して次のビールである。ま、次も楽勝に決まっているのだ。2回連続で正解すればさすがに娘もちょっとは感心するに違いない。
『よーし、やってやるのだ、見てろー!』
目を閉じて早速渡されたビールを飲んでみたのだ。しかし、である。
『ん?あ!?マジかよー!?』
となってしまったのである。と言うのもLager かBlondeのどちらか、と言う所までは分かるのだが、それ以上分からんのだ。
『えー!?どっちだ?どっちだ?』
普通に飲んだ時はあんなに明かだったのに(と思ったのに!)、目を閉じて飲むとまったく違いが分からんのだ!ヤバイ!これはかなりヤバイ!!
まさかこんな事になるとは、予期せぬ展開である。何しろあれだけ絶対全部楽勝で分かると大口を叩いてしまったのだ、ここで間違える訳にはいかないのだ。
もしここで間違えたら元々あるかないか分からんぐらいの微々たる親の威厳が跡形なく全て吹っ飛んでしまうではないか。それに、である。
俺は今までの人生常にビールを飲んできたのだ、このぐらい分からなくてどーするのだ。ここで間違えたら今までの俺のビール人生は何だったのだ、と言う事になってしまうではないか!俺にだってビールに人生を捧げてきたビララバーとしてのプライドがあるのだ、たぶん、きっと。
頑張れ俺!絶対に当ててやるのだ。ここで負けるわけにはいかんのだ!しかし、更に一口飲んでみても一向に違いが分からないのである。ヤバイ!一体どーすればいいのだ!
と、この時点でかなり狼狽し取り乱しそうになったが、ここで焦ってはいけない。落ち着いて味わえばきっと分かるはずだ。そう自分に言い聞かせ、落ち着いてから再度一口飲んでみたのだが、やっぱり違いが分からないのだ!何と言うことだ!
あれだけ自信満々に全問正解確実、などと娘に言っておきながら間違える訳にはいかんのだ。親として格好がつかんではないか!ここは何としても当てなくてはならん。しかしさっぱり分からん、どーしたらいーのだー!
あまりのプレッシャーに気は動転し、もはや何も考えられる状態ではない。ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。
しかも待ち切れなくなったチワワが親の焦りなどお構いなしに「まだー、遅い!」などと無情にも更なるプレッシャーを与えてくるのだ。うわー、もうこうなったら仕方あるまい!
確率は2分の1なのである、最悪デタラメに言っても当たる可能性は高いのだ。やるしかない、2分の1の可能性にかけるしかないのだ!俺は覚悟を決めて叫んだ。
『これは絶対lagerに間違いない!!』
すると娘が嬉しそうな声で「ブッブー、違いまーす、blondeでした!」と言ってケラケラ笑い出すではないか。
『おーーーーーーのーーーーーー!!!』
この瞬間俺のささやかなビアラバーとしての誇りと親の威厳が音を立てて崩れさったのであった。無念である。。。
と言う訳で、娘にいいところを見せようと思ったテイスティングは燦々たる結果となったが、それは俺の味覚がぽんこつだと言うだけの事で、このブルワリーのビールの美味さは間違いなく本物である(ってこの味覚音痴が言っても微妙なのであるが)。
それに店の人も実に親切で、何とサービスでプレッツェルをくれたのだ。
このしょーもない親父はビールの事で頭が一杯で、娘のおやつを持ってくるのを忘れてしまったのだ。親父だけビールを飲んで娘はおやつもないのを可哀想と思ったのか、気を利かせてサービスしてくれたのである。なんていい人なのだろうか。
感謝感激である(しかし、テイスティングに失敗した俺は自失茫然としていて写真を撮ったのはほぼ食べ終わった後であった)。
実に親切でいいブルワリーなのである。それに俺たちが来たのは開店直後だったため、最初はまだ客はあまり来ていなかったが、後からドンドン来て俺たちが帰る頃にはほぼ満員になっていたのだ。やはり人気のあるブルワリーなのだろう。
テーブルやバーカウンターには仕事帰りに一杯飲みに来た、と言うような客が多く、ソファーがある部屋には小さな子供を連れた家族がまるで自宅でくつろいでいるようにビールを飲んでいた。
実にアットホームでいい感じの店なのである。まさにローカルに愛されている小さなブルワリー、と言う感じなのだ。俺も完全にこの店のファンになったので今後も隙を見てちょくちょく来ようと思うのだ。
そして密かにテイスティングの練習をし、今度こそリベンジして親の威厳を取り戻してやるのだ!(ってもう手遅れだとは思うが)
まあとにかく、美味いビールが飲めて、娘とも楽しいひと時が過ごせて実にいいブルワリーであった。
やっぱりビールは最高だぜ!