北米の最新クラフトビール情報をお届けします。

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さてここではクラフトビールの話題から離れ、世界のビール業界について少し覗いてみましょう。

日本ではアサヒ・キリン・サッポロ・サントリーの4大ビール会社が市場を寡占し巨大なビール会社のイメージがありますが、世界に目を向けると国内と比較にならない巨大なマーケットの様相が見えてきます。

以下のインフォグラフィックはVisual Capitalistが作る世界の巨大ビールメーカの構図です。この図が作成されたのは2016年ですのでやや古いですが、現在もこれら巨大グループにより世界の殆どのビール市場が流通しており、クラフトビールは世界的に見ればまだまだ小さい存在です。

https://www.visualcapitalist.com のインフォグラフィック「世界のビールをコントロールする5大ビール会社」

 

2018年 世界のビールメーカートップ10(生産量別)

アメリカのBrewers Associationのデータに基づき、生産量に基づくメーカー別の世界トップ10を並べてみました。( 生産量は2017年度のものですが順位は2018年も全く同じ)

1位:アンハイザー・ブッシュ・インベブ(通称ABインベブ)/ベルギー
生産量433.9億リットル
2位:ハイネケン/オランダ
生産量200.1億リットル
3位:華潤創業(China Resources Snow Breweries)/中国
生産量118.8億リットル
4位:カールスバーグ/デンマーク
生産量116.9億リットル
5位:モルソン・クアーズ/アメリカ・カナダ
生産量95.2億リットル
6位:青島/中国
生産量79.2億リットル
7位:アサヒ(日本)/日本
生産量59億リットル
8位:燕京ビール/中国
生産量45億リットル
9位:キリン/日本
生産量42.5億リットル
10位:Castel Group/フランス
生産量32.9億リットル

なんと言ってもダントツ世界一のアンハイザー・ブッシュ・ インベブ(通常ABインベブ、ベルギー)が二位のハイネケン(オランダ)の倍以上、キリンビールの10倍以上のビール生産量を誇ります。
「ベルギーは小さい国なのにさすがビール大国!」と関心しそうになりますが、実はそんな単純な話ではありません。ABインベブはM&Aの激しいビール業界を象徴していると言ってよいでしょう

ABインベブ完成までの合併経緯をざっくりと示すと以下のとおり。

1999年:ブラーマ、アンタルチカ、スコールが合併⇒アンベヴ(ブラジル)
2004年:アンベヴ、インターブリュー(ベルギー)が合併⇒インベブ
2008年:インベブがアンハイザー・ブッシュ(アメリカ)を買収⇒アンハイザー・ブッシュ・インベブ
2016年:アンハイザー・ブッシュ・インベブがSABミラーを買収。

※上記以外にも多数のM&Aが行われています
※アンハイザー・ブッシュはバドワイザーを所有する会社
※SABミラーはイギリスのSABがアメリカのミラーを買収して誕生

ABインベブの圧倒的な生産量は特にSABミラーを買収した時点で決定的となりました。何故ならSABミラーは買収の時点でもABインベブに次ぐ世界第2位のビール生産量の会社だったからです。
という事で、ABインベブは無数のビール会社が合併して完成した超巨大なビール帝国であり、所有銘柄も50カ国で200以上あると言われています。有名な国際ブランドだけでも、バドワイザー、バドライト、ステラ、コロナ、Beck’s、ヒューガルテンが含まれます。

なお10位以内に中国メーカーが三社エントリーされていますが、これも納得。何故なら中国はアメリカを超える最大のビール消費国で、世界全体の2割を消費すると言われています。ちなみに銘柄単体で言うと、世界で最も売れているブランドは華潤ビールの雪花、二位は青島ビールです。日本人は聞いた事もないようなビールが世界一というのもびっくりしますね。中国の人口13億人パワーはまさに爆発的です。

北米の販売量では、銘柄別ではバドライトが圧倒的1位。バドワイザーも3位に入っており、ABインベブの銘柄はこの二つを含め10位以内に6銘柄もある状態となっています。2位のクアーズライト、4位のミラーライトはモルソン・クアーズ社の銘柄です。クラフトビールの勢いが激しいアメリカも、セールスの上位を見るとこのように巨大メーカーが君臨する構図が見えてきます。

日本のビールメーカーはアサヒとキリンがランキングされています。会社の大きさではサントリーが日本ビール業界では最も大きいのですが、ビールの出荷量に限っていうとやはり国民的ビールのスーパードライを誇るアサヒがトップに立っています。

人口パワーで上位に食い込む中国は別としても、世界ランキングで出てくる会社はとにかくM&A抜きに語れません。従ってどこの国のビール会社か?と判断するのも難しい話で、むしろ消費者としては運営会社はあまり気にせず、銘柄ごとに「どこで生まれたビールなのか」と想像しながら飲む方がはるかに楽しいものですよね。

※ちなみに巨大メーカーの生産量を示す際は通常「million hectoliters(百万ヘクトリッター)」という単位を使います。1ヘクト=100なので、100万ヘクトは1億という事になります。このページでは一般の方がイメージしやすいよう単なる「リットル」を使いました。とは言え400億リットルと言われてもイメージつきませんね。笑 なお東京ドーム一杯分は12.4億リットルです。

参考リンク
https://www.usatoday.com/story/money/food/2018/05/03/most-popular-us-beer-brands/573703002/
https://www.insidermonkey.com/blog/11-largest-beer-companies-in-the-world-in-2017-605003/?singlepage=1
http://liquorpage.com/top10-beer-sales-world/
https://www.therichest.com/expensive-lifestyle/entertainment/top-five-largest-beer-brewing-companies-in-the-world/
http://nomad-salaryman.com/post-5726
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24913790R21C17A2000000/